農地転用制度の概要③

1.農地転用の一般基準、②周辺農地の営農条件への支障

ここまでは、農地転用の一般基準について、目的実現の確実性や事業の妥当性について解説してきました。貴重な農地をつぶすわけですから、その土地で確実に事業が行われるかどうかはとても重要なことだといえます。
ここからは、農地転用を許可した場合の、周囲の農地に与える影響についての話になります。

 農地法の原文

申請に係る農地を農地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合(農地法第4条第6項第4号)

申請に係る農地を農地以外のものにすることにより、地域における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合として政令で定める場合(農地法第4条第6項第5号)

上記の条文が示すところによれば、次のいずれかに該当するときには、周辺農地の営農条件に支障があるものと評価され、許可を受けることができなくなります。許可の申請にあたっては、これらに該当しないような措置を講じておかなければなりません。

1-1.土砂の流出または崩壊その他の災害を発生する恐れがあると認められる場合

  • 安全な擁壁を設置するなどの措置が必要です。被害を防ぐための対策を講じているかどうかは、添付書類の土地利用計画図などによって確認が行われます。

1-2.農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合

  • 雨水、汚水の排水について適切な計画を立て、水路使用許可や水利権者の同意を得る必要があります。雨水や汚水の排水経路については、土地利用計画図に記入することになります。

1-3.その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

  • 集団的に存する農地を蚕食、または分断するような利用を避ける必要があります。
  • 日照や通風について、周囲の農地への影響を及ぼさないような措置を講じなければなりません。
  • 農道、ため池その他の農地の保全に努め、営農上必要な施設の維持管理に協力しなければなりません。

2.農地転用の一般基準を満たすために大切なこと

農地転用の許可には立地基準と一般基準がありますが、多くの場合、許可の阻害要因となるのは立地条件となります。立地基準については土地を動かすことは不可能であるためほぼ対策不可能なためです。

これに対して、一般基準については、事業を行う申請者側の対応によって、不許可に該当するような案件に許可がなされることもあり得ます。大切なのは、許可に必要な対応を講じることであり、そのためには、要件として何が求められているのかを知ることが大前提です。

また、一般基準の審査には、実現が難しい転用事業をあらかじめ排除するという機能を持つものだと考えることができます。ご自身の事業について、見直しをするためのきっかけとなるかもしれません。